福島第一原発の現状7

3/15 12:30時点(13:15更新)
情報の変化が早くて,正確な分析が難しくなっていますが,コメントを試みます.


【要約】

・厳しい状況が続いていることは間違いない
・事故の収拾のためには1〜3号の原子炉をひたすら冷却する以外ない
放射性物質の放出の可能性や,外部で検出した放射線量についての報道がいろいろなされているが,重要なのは「放出/検出があったか否か」ではなく,その「量がどれくらいか」
・少なくとも公開されている範囲の情報に基づく,今朝がたくらいまでの量であれば,周囲の方々への健康への影響はないレベル
・仮にこの後,大規模な放射性物質の放出があったとしても,避難や屋内退避,換気しない,肌の露出をしない,等の対策を取れば影響はかなり避けられる
・今最も危険にさらされているのは東電の作業員.しかし彼らに頑張ってもらう以外,方策はない.(万が一に備えて作業員に退避指示をした等で騒がないでほしい・・)


【すべきこと】
・近接する地域の方は,政府の指示通り,避難や屋内退避等を徹底すること
・それ以外の地域の方は,特に対策をする必要はない.
・誤った報道,より正確には「正しい情報に対する,的確でない解釈による報道」や「原因や因果関係が不明確な事実をつなぎ合わせた報道」も見受けられるが,それらに惑わされて近接する地域の方の不安をあおらないこと


以下3/15 13:15更新---------------------------------------------

【2号炉の現状,東電の対策】
・6時過ぎに衝撃音があり,その後,格納容器の一部サプレッションプールの圧力が下がった ← 損傷した可能性大
・格納容器の他の部分への影響は今のところ見受けられない(ただしサプレッションプール自体は格納容器の一部)
・1・3号と同様,現在も海水注入による冷却を継続


ひたすら冷却するしかない.


【外部への放射性物質の放出,検出された放射線量】
数値を見る際は単位に注意!一部の報道には単位を正確に伝えていないものがある!
健康への影響などを説明する際に用いられるμSvやmSvは,一瞬で浴びたときの量.
公表されている数値で用いられているのはμSv/hやmSv/hで,1時間浴び続けたときの量.
m(ミリ)はμ(マイクロ)の1000倍


発電所の周囲のモニタリングポストにて,6時過ぎの衝撃音のあとや8時台に放射線量の増加があったが,どちらも一時的なもので今は下がっている
・数値としては8時台に検出された8217μSv/hが最高値だが,CTスキャンが6900μSvであり,健康への影響が出る量よりは相当少ない量
・その後報道された400,100,30mSv/hと言った数値は,2号や3号などの周辺で計測されたもので,影響を受けるのは東電の作業員
放射線量の目安はこちら(ただし単位に注意!)→http://www.enecho.meti.go.jp/genshi-az/ray/ray_type/ray_type.html


【4号機の火災】
・4号機はそもそも定期検査中で,炉内に核燃料はない
・火災の原因は,建屋内のプールにある使用済み燃料の冷却がストップし,使用済み燃料のジルコニウムと水素が発生し,小さい水素爆発が起こったことによる
・3号付近での高い放射線量はこの事象からの影響の可能性がある
・現在は火災は消火されたよう


当面,様子を見るしかない.ただ1〜3号(特に2号)の状況の方が厳しい

【まとめ(2)】福島第一原発の状況

3/14 20:00時点
福島第一の2号も1・3号と同じ状態になりつつあり,長期戦になってきていますが,ここで1度状況をまとめてみます.
最初のまとめ記事はこちら→http://d.hatena.ne.jp/horiken815/20110312/1299925558


【要約】
・福島第一の1〜3号は時間差で全て同じような経過をたどっている
放射性物質の放出を防ぐには,圧力容器内を冷やすことが第一
・圧力容器とその外側の格納容器が最後の砦なので,その破損を防ぐために温度と圧力を下げないといけない
・万が一の放射性物質の放出に備えて,避難を完全な完了と屋内退避等の対策を継続する


不幸中の幸いとして,1〜3号は時間差で全て同じような経過をたどっているので,東電は前の事例をもとに先を予測し,早めに対策を打てるようになっている
「炉心の冷却」と「万が一に備えた対策」を適切に実行することが肝心


【福島第一1〜3号がたどっている経過】
①圧力容器内の炉心を冷却する機能を失う(真水を炉心に送ったり,出てきた高温水から熱を取り除くための電源やポンプ等)
 ↓
②圧力容器内の温度が上昇すると共に,冷却材(水)がどんどん蒸発して水位が下がり,燃料が蒸気中に露出.真水の代わりに海水を注入して冷却.
 ↓
③露出した燃料中のジルコニウムと水が反応し,水素が発生
 ↓
④発生した水素が,冷却材が通る配管等を通じて原子炉建屋内に流出
 ↓
⑤建屋の一部で水素濃度が上がり爆発(水素爆発)し,建屋が崩壊(ただし格納容器への影響は見受けられない)
 ↓
⑥炉心の冷却と,格納容器内の減圧を継続


2号は1・3号と比べて状況は良く,まだ燃料が露出していないため,水素の発生や水素爆発には至っていないが,今後同様の経過をたどる可能性がある
1・3号は炉心の露出は続いているので水素はまだ出ているが,建屋を喪失したため溜まるところがなく,直接大気中に放出されているはず.格納容器内は酸素がないので,水素爆発はまず起きないだろう


【東電が取っている対策】
1.炉心の冷却(経過②以降は真水に替えて海水を注入)
2.格納容器の減圧(格納容器内の空気を大気中に放出.その中にはごく微量の放射性物質も含まれる)
3.2号の建屋中の水素の除去方法の検討(壁に穴を空けて逃がす,等)


最優先で取るべき対策は圧力容器内にある炉心の冷却.冷やしきれば,大規模な放射性物質の放出という最悪の事態は避けられる
同時に,格納容器が破損しなければ大部分の放射性物質は閉じ込めておけるので,格納容器を守るために減圧等を実施
2号では,水素爆発を防ぐために,壁に穴を空けて水素を逃がすなどの対策を検討しているが,既に水素が溜まっていると不用意な対応をすると爆発を引き起こす可能性があるので慎重を期している


【万が一に備えた対策】
1.避難する(放射性物質が放出される地点から距離を取る)
2.屋内へ退避,肌の露出を避ける,換気扇を消す(放射性物質との接触を避ける)
3.マスクをする(放射性物質の体内への吸収を防ぐ)


万が一放射性物質が放出されても,上記の対策をきちんと行えば,健康への影響は相当程度防ぐことができる
ただしこれらの対策をするべきなのは,あくまで原発に近接する方々のみ
それ以外の人たちは原発に近接する方々が落ち着いて対応できるようにサポート(誤った情報を流さない等)


放射性物質の放出状況】
・燃料の一部が露出し損傷したことにより,燃料中のセシウムが気化し,冷却水の配管等から外に流出
・一部は格納容器減圧のための空気に混じって放出


放射性物質が微量ながらも放出されていることは事実
しかしその程度は直ちに人体に影響が出るレベルではない
例えば,発電所の正門付近で観測された1015μSvという数値は,レントゲン3〜4回分程度
被ばくされた方々の正確な状況はわからないが,専門医も派遣されているので適切な処置ができる状態

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【東電へのサポート】
ここにこういったことを書くのは適切ではないと思っていたので非常に悩んだのですが,少しだけ書かせてください.


今回の地震は,日本史上最大のまさに未曾有の事件です.誰も経験したことがありません.
それは東京電力も同じです.初めて遭遇する異常事態に懸命に闘っています.


私の友人にも,福島第一や第二で奮闘している仲間が何人もいます.
彼らも含めて人々の安全を第一に考えない原子力屋は1人もいません.


停電の件も含めて,情報が錯そうしたり不十分だったり,不安や不満もあると思いますが,ぜひ彼らをサポートしてあげてください.
不安なことは私にぶつけていただければ,できる範囲で対応したいと思います.

福島第一原発と福島第二原発の現状5

3/14 11:30時点

昨晩もう1報するつもりだったが,遅くなった.
報道では計画停電の方がメインになっており,十分な情報が得られていないが1報.


アップ直前に福島第一の3号で水素爆発が起こったようだ.
1号の爆発を基準に考えると建屋は壊れても格納容器への影響はほぼないと推測されるが,予断は許されない.
放射線の異常な上昇もないようだが,最終的な報告を待つ.
近隣の方は念のため,屋内に入る,肌の露出を控える,換気扇を止めるなどの対応を.


【福島第一の状況】
・福島第一は1号〜3号まで,それぞれ状態は違う
・1号は,海水の注入を完了.格納容器内の圧力も安定.様子を見て必要があれば注入を再開.
・2号は,現在安定している.
・3号は,海水の注入を一時中断があったが継続している.


福島第一については,引き続き,油断をせずに慎重に推移を見守る必要あり.
特に気になるのは3号の状態だが,とりあえず水素爆発の影響の報告を待つ.


【福島第二の状況】
・福島第二は順調に冷却が進んでいる.1・2号は冷却が完了した模様.


福島第ニは比較的順調に推移しているので,心配しすぎず落ち着いて様子を見守るのでよいと考える


原発に関するQ&A】
原子力系の学生有志が原発に関するQ&Aサイトをつくっています.
僕の友人も複数名関わっているので,信頼性は高いです.
詳しいことが知りたい場合は参照してみることをおすすめします.


原発に関するQ&Aまとめ
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=752


Q&A on the Nuclear Power Stations
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=830


このブログでは,引き続き,専門的な記述を極力減らして,
「今どうなっているか?」「これからどうなるか?」「何をすればいいか?」を中心に書いていきます.

福島第一原発の現状6

3/14 24:00時点
福島第一について,2号の状況を中心に書く.関連エントリも増えてきたが,まとめとしては以下の2つを参照ください.


福島第一の状況まとめ(1)
http://d.hatena.ne.jp/horiken815/20110312/1299925558
福島第一の状況まとめ(2)
http://d.hatena.ne.jp/horiken815/20110314/1300099536


エントリアップの直前に,23時の時点で,圧力容器から圧力を逃す弁が閉まり,海水を入れられなくなったため,水位が低下,燃料全体が露出した可能性がある,との情報あり.状態が少し悪化


【2号の状況】
・18〜20時頃は海水の注入がうまくいかず水位が低下し続け,一時4mあまりの炉心が全て蒸気中に露出した可能性がある
・21:30頃の東電からの情報では,水位が燃料頂部から3.3m下まで回復してきた(燃料のうち70cmは水の中)
・22時頃の情報によると,燃料の半分くらいまで上昇した(燃料のうち2m程度は水野中にいるのでは)


現在の状況は決して良いとはいえないが,水位が回復しているという点では良い兆候
1・3号の含めて,あとはひたすら冷却をするだけなので現時点では慎重に推移を見守るしかない


【燃料の露出と炉心溶融
1〜3号の共通して「冷却機能の喪失」「水位の低下と燃料(炉心)の露出」「燃料の部分的な溶融」という流れがあるが,燃料の露出と燃料溶融についてコメント.


・燃料が露出したとしても,即座に溶融が起きるわけではなく,温度の上がったところ(主に燃料の上部)からちょっとずつ溶け始める
・いわゆる「炉心溶融」は4mある炉心の大半が溶ける状態で,燃料の部分的な溶融とは,事態の深刻さが全く異なる
・現在は「炉心溶融」を避けるために,海水の注入による冷却を継続中
・「炉心溶融」と「燃料の部分的な溶融」は,局によって使い分けられているところとそうでないところがある
・溶融しているかどうかは直接確認する手段はなく,燃料中の放射性物質(気化して外に出やすいセシウム)が外部で検出される等の状況証拠と,圧力容器内の圧力や温度,水位等のパラメーターを元に推定している


重要なのは「炉心溶融が起きているかどうか」ではなく,「どの程度の溶融が起きていると推定されるか」
そして,冷却がこれから順調に進みそうかどうか

福島第一原発の現状4

3/13 15:45

枝野官房長官の会見を基にまとめ.取り急ぎアップデート.

【3号の状況】
・冷却水を送っていたポンプのトラブルにより,真水から海水に切り替える
・3号の冷却水の水位が下がったが,現在は回復
・水位が低下した際に,燃料が露出し,ジルコニウムと水の反応で水素が発生した可能性有


発生した水素が圧力容器から格納容器に漏れ出し,格納容器からのベントにより建屋の上部に溜まっている可能性がある
建屋内に溜まっていた場合,1号と同じように水素爆発が起きる可能性もある
ただし爆発が起きたとしても建屋内であるため,昨日のケースから考えても格納容器に影響が出る可能性は低い

福島第一原発の現状3

3/13 14:30時点

キャッチアップが遅くなったが,現状アップデート.

原子炉の状況についてはFNNの澤田先生(東工大原子力),被ばくの影響についてはNNNの中川先生(東大・医学部・放射線科)の解説が適切.


発電所の状況】
・1号の原子炉圧力容器内への海水の注入は完了
・3号の冷却水の水位が低下している(ほっておくと1号と同じ状況になる可能性あり)
・3号に対して,圧力容器内冷却水(真水)の注入と格納容器の圧力を下げる作業(ベント)を行っている


1号に関しては,大規模な放射性物質の放出が起きる可能性はかなり低くなってきている
3号も状況が心配されたが,官房長官の報告では順調に対処できている
事態は昨日に比べれば落ち着きつつあると考えられる
安心・油断はできないが,冷静に事態の推移を見守るべき
(少なくとも,発電所に近接する地域以外に影響が出る可能性はかなり低くなったと考えられる)


【外部での放射線量の増加】
発電所の計測地点の1つで高い放射線量(1204μSV)を計測,その後低下


高い放射線量を計測したのは,1号の格納容器からのベント(圧力を下げるための空気の放出)が起源ではないか?
1号の核燃料は破損していると考えられるため,1号からのベントには,
ウランの核分裂によりできたセシウムが気化して漏れ出ているため.
量としては,レントゲン1回が300μSV程度なので,人体に対して大きな影響はないレベル


【外部での被ばく】
・19名が被ばくし除染が必要,他に90名が被ばくの可能性あり,という報道


情報が質・量ともに十分でないため,現状では判断できない
例えばそれぞれの被ばくの程度や原子力発電所の事象との因果関係など.
ただし,原発起源だとしても,周囲の放射線量の検出の状況から考えると,
人体に甚大な影響を及ぼすような被ばくであるとは考えにくい


いずれにせよ,現状をもっとも心配しているのは,避難している方なので,
曖昧な情報や十分でない情報に基づいて,表現をするのは避けるべき.
必要以上に不安をあおってパニックを起こさないように,同時に起きている事態に適切な対応が取れるように.

福島第一原発の現状1

基本的なところに関しては以下の記事へ.
http://d.hatena.ne.jp/horiken815/20110312/1299925558

とりあえず現状と対策をアップデート↓


【現状】
・午後の爆発により建屋は崩壊した
・格納容器への影響はない
・午後に高い濃度の放射能はその後10分の1以下に下がってきている.


【事故防止の対策】
・海水注入による原子炉の冷却
・ホウ酸注入による再臨界の防止


重要なのは海水の注入による冷却の方.
ホウ酸は臨界(連続的な核分裂反応)に必要な中性子を止めるものだが,
既に制御棒がきちんと挿入されて核分裂反応は止められているため,
ホウ酸の注入は,万が一,億が一に備えたもの.


【原因や因果関係の不明な事象】
・3名が被ばく(病院にいた人)


福島第一の件との因果関係は不明.
ただ午後に観測された放射能の濃度から考えると,
仮に原発が起源だとしても健康影響が出るレベルではないと考えられるし,
病院には医療用RI(放射性物質)がある場合があるので,
それによる被ばくの可能性もなくはない.
(どうやら前者が濃厚)