【まとめ(3)】福島第一原発の状況
3/16 23:00時点
今日は情報提供ができていなかったので,少しまとめてお知らせします.
外部への放射能漏れやそれに対する対策については触れていませんが,その辺はデマが増えたのに対抗して信頼できる情報源が増えているのでそちらを参考に.
以下2つは特におススメです.これらを読めば,発表されている数値を正確に解釈できるかと思います.
・中川先生(東京大学・医学部)を中心とした放射線治療専門チームのtwitter @team_nakagawa
・放射線医科学総合研究所Webサイト http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i3
また以前のブログhttp://d.hatena.ne.jp/horiken815/20110315/1300160308の【外部への放射性物質の放出,検出された放射線量】でも触れています.
【福島第一で起きている事象】
・細かい条件は異なるものの,現在福島第一で起きている事象には2種類ある
・1つが,1〜3号の「原子炉内」で起きている事象,もう1つが3・4号の「使用済み燃料プール」で起きている事象
【2つの事象の共通点】
・どちらも核燃料(または使用済み燃料)が発熱している
・発熱の原理は,ウランの核分裂により生成された別の放射性物質(核分裂生成物)からの発熱(崩壊熱という)
・核分裂反応は止まっている(使用済み燃料はもちろん,炉内に残っている核燃料も)
・対策はひたすら水で冷却すること
【1〜3号の原子炉内で起きている事象】
[現状]
・備え付けの緊急用冷却機能を喪失し,原子炉圧力容器内の温度が上昇,冷却水の水位低下,燃料の一部が露出
・消火用ポンプを使い,海水にホウ酸を混ぜて炉内(圧力容器内)のに注入し,冷却を継続
−ホウ酸を混ぜるのは,炉心溶融による再臨界(連鎖的な核分裂反応の再開)を防ぐため
・水位は1〜3号どれも炉心頂部から約マイナス2m
−4mの炉心の半分程度が蒸気中に露出
−決してよい状況ではないが,長らくこれより下がっていないようなので,悪化もしていない
−海水注入を継続し,この水位を維持・上昇させていくことが重要
・圧力は午前の時点で0.9MPa程度(3号)
−あまり圧力が高いと消火用ポンプではパワーが足りず水が注入できない
−今は注入できているので,今後も低圧力をキープして,海水注入を途切れさせないことが重要
・露出が長く続いているので一部損傷(場合によっては溶融)している可能性あり.ただし,
−燃料はペレットとその外側を覆う被覆管とからなるが,放射性物質は全てペレットの中に入っている
−融点はペレット2800℃,被覆管1850℃であるため,被覆管が溶融してもペレットは溶融していない可能性
−ペレットが溶融しない限り,放射性物質の大部分は放出されない(気化しやすいセシウムのみ外部に流出)
[対策]
・冷却を継続することが最も重要.
・冷却しきってしまえば,炉心の大部分が溶融してしまうことはない
・仮に炉心が溶融しても圧力容器とその外側の格納容器で放射性物質を閉じ込めれば外には放出されない
・格納容器の健全性も重要なので,圧力を上げすぎないよう管理する必要あり
・2号はサプレッション・チェンバー(格納容器の一部)が破損している可能性があり1・3号よりも確実に冷却が必要
【3・4号の使用済み燃料プールで起きている事象】
[現状]
・プールの冷却機能がなくなり水温が上昇,蒸発して水位が低下し,使用済み燃料が露出してしまう可能性
−元々の温度は40〜50℃程度だったが,3号では白煙(おそらく水蒸気)が発生.蒸発が始まっている可能性
−発熱量は炉内の核燃料に比べて格段に少ない
−それでもほっておくと水位が下がり使用済み燃料が露出してしまう
・使用済み燃料プールは格納容器の外,建屋の中にあるので,炉内の核燃料と比べると大気中への拡散リスク高
−露出してもすぐに放射性物質が出るわけではない
−使用済み燃料の温度が上昇すると,上述の原理でセシウムの気化や一部の溶融が起き,放射性物質が放出
・使用済み燃料は強い放射線を出すため近付いて作業するのが困難だが,水の中にあれば放射線は遮蔽できる
[対策]
・注水により冷却,放射線を遮蔽
・現在は地上からの放水準備の最終段階.ヘリからの注水は放射線量が高く断念,明日以降に再度トライ
・炉心と比べて,温度も低く,発熱量も少ないので,水の注入による冷却効果は高い
【5・6号の状況】
・3・4号と同じことが起こる可能性があるが,水温はまだ50〜60℃程度.時間的な
・津波で海水ポンプを喪失したが,新しい海水ポンプを設置工事中で,2〜3日中に動く可能性
【懸念事項/良いニュース】
[懸念事項]
・発電所内の放射線の強度が上がっており,作業員がより厳しい環境での作業さざるを得なくなっている
・作業員は,被ばく管理をされており,放射線強度が上がると,1回に作業できる時間が限られていく
・体力的にも厳しい中,できる限りストレスを感じずに作業をしてもらう必要がある
[良いニュース]
・新たに送電網を引き,外部電源が回復される可能性あり
・どの機器が生きているかはわからないが,外部電源が使えれば,備え付けの冷却機能が復旧する可能性あり
・確実な情報ではないので,楽観視はできない
【東京から避難する必要があるか?】
・昨日から数人の友人から聞かれたが,技術的な結論としては「避難する必要はない」
−距離が200km以上あるので大規模に放射性物質が放出されたとしても,東京で人体に影響は出ない
−100km離れた東海村では福島第一周辺の1/100〜1/1000程度になっている.
−東京はさらに1/100〜1/1000なると考えられる.
−気になる方は適宜「都道府県別環境放射能水準調査結果」http://bit.ly/fByHZkを参照
・私見だが,福島第一の近接地域(20km圏)以外での問題は不必要な不安喚起による精神疾患・パニックの誘発
・誤った情報も氾濫している東京等より,遠方にいる方が精神衛生上よければそちらに行くのも1つの選択
(特に春休み中のお子さん等)